NPO法人小樽民家再生プロジェクト/旧寿原邸 小樽市指定歴史的建造物第27号
「旧寿原邸」は、今回、小樽おもてなし認証を取得した施設のなかで、唯一NPO法人が運営している施設です。この建物は、1912(大正1)年、「小豆将軍」として名を馳せた雑穀商・高橋直治が創建し、その後、こちらも小樽を代表する実業家・寿原外吉の邸宅となった小樽市指定歴史的建造物。この旧寿原邸を小樽市から委託され、管理・運営している「NPO法人小樽民家再生プロジェクト」代表の石井伸和さんにお話を伺いました。
「元々、小樽の本質はアナログ性。もったいない精神で、空き家に住みたい移住者と建物を繋ぐ我々だからこそ、この寿原邸も人と人との交流が生まれる場にという理念を持って運営しています」と語る石井さん。そんななか、NPO理事の一人から「おもてなし認証制度」のことを聞き、「この制度は、自分たちの理念にも合致する。渡りに船だ!」と、すぐにエントリーを決めました。
旧寿原邸は、歴史的建造物であり文化的価値はありますが、築112年で床の一部も斜めになっているなど、老朽化が進んでいる建物と言えます。さらに、個人邸宅ゆえの狭さもあり、「おのずと同じ空間にいる「人」に興味がいく距離感」と語る石井さん。完璧じゃないからいい、中途半端な空間というのが大事で、この建物自体も人間らしいと言うのです。
毎年、4月下旬から10月上旬までの土日祝日のみ一般公開しています。
また、NPOメンバーは、年齢も仕事も皆バラバラ。しかし、皆「旧寿原邸に来て、ますます小樽を好きになってくれたら」という想いで集まっており、代表の石井さんと同じ主体性を持って、旧寿原邸の運営に当たっています。接客についての教育はゼロにも関わらず、会員それぞれの個性を活かしながら、多様な表現方法で、寿原邸を訪れる「人」と交流しているんです。
ノートには、寿原邸運営メンバーのあたたかいおもてなしに感動した「声」がたくさん書かれています。
「彼女は、ムード作りが本当にうまい。気軽に声をかけて、相手も安心させるのは天賦の才能だね」と、石井さんが一目置くのは、NPOメンバーの一人である山谷智恵子さん。確かに、すぅっとお客さんに話しかけ、自然に交流している様子で、「接客しなきゃ」ではなく、ご本人が交流を楽しんでいるのが感じられます。「人間と人間の交流こそ、小樽の魅力」と考えているNPO法人 小樽民家再生プロジェクトだからこそ、接客マニュアルなんてものは必要なし。メンバーの根っことなる理念が一緒なので、枝葉はそれぞれに任せていても、自然と「小樽らしいおもてなし」ができているのがわかりました。
外国の方にも、笑顔で話しかける山谷さん。 寿原邸について、小樽についてお伝えしたい!という気持ちが伝わってきます。
ちゃんと英語の説明・紹介文も用意されています。
(取材・執筆/田口智子)