今年、全国で初めて、地域独自の「小樽おもてなし認証」制度が誕生。その第1回目の認証を受けた小樽市内の企業や団体、店舗にインタビューを行い、その業種や店ならではの「おもてなし」について語ってもらいます。今回は、認証を受けた企業のなかでも一番多くの店舗の参加があった北一硝子の各店・店長にインタビューをさせてもらいました。
地酒屋北一
北海道内の日本酒や焼酎、梅酒に地ビールなどがずらりと並ぶ「地酒屋北一」。「国内、海外というだけではなく、人によって求めるものが違ってきます。お客さまを観察し、どんなものがお好きなのだろう?と想像しながらお声をかけています」と語る松田店長。「お酒のことはわからないけれど、友人に贈りたくて…」というお客さまとも、会話を重ねながら味の好みを引き出し、何種類かご提案をしながらお品選びを手伝います。「おいしいのはどれ?」と聞かれることもあれば、「人気ナンバー1は?」と聞かれることも。また、「精米〇パーセントのものが欲しい」と言われることもあるので、当然、各お酒に関する情報収集や学びは欠かせません。
そのようなお客さまの1つ1つの要望に、臨機応変に対応していくのが「地酒屋北一」のおもてなしです。お酒販売の経験が長いスタッフが多いのも、そんな理由から。新人メンバーが入ると、ベテランスタッフがしっかりと教えていくことで、お酒の知識と接客方法を習得していくそうです。

じつは、「おもてなし認証制度」を取得のための覆面調査で、「挨拶が弱い」という指摘があったそう。「できているつもりでいましたが、覆面調査のおかげで弱い点に気づき、皆で意識していこうと前向きに捉えることができました」とのこと。また、「認証のステッカーと盾は店舗内の目立つところにあるので、毎日目に入ります。気持ち的にも、しっかり取り組まなくては!と気が引き締まります」と話してくれました。
奥には試飲コーナーもあり、季節によっては行列ができることも。出来るだけお待ちいただく時間が短くなる様、対応する人数体制を柔軟に変更するなど、日々工夫を重ねているそうです。「おもてなし認証」を取得しようとするなかで、客観的に自店のおもてなしを見つめ直すことができるのも、この制度の良いところ。認証を取得したから終わりではなく、改善への取り組みを重ねることで、さらに進化したおもてなしへと進んでいくことができるんですね!

北一硝子 アウトレット
入社34年目というベテラン社員の松島店長でも、「全店の商品を扱うため、幅広い知識が求められます。さらに、なぜアウトレットなのか?を説明する必要もあるので、なかなか難しい店舗だと思います」という「北一硝子 アウトレット」。たしかに他の店舗では、自分の店舗で扱う商品のシリーズがまとまって置いてありますが、アウトレットの店舗内には各店から来た商品が隣り合って陳列されていることもあり、その種類は多種多様。さらに、1つ1つの商品が「なぜアウトレットなのか?」の理由も様々なので、その説明も必要になり、元々の商品の知識に加えた「この商品ならではの個性」を説明する必要があるわけです。

「アウトレットというと、何か問題のある商品が安くなっているというイメージを持つかもしれませんが、店長の私でも“どうしてアウトレットに回ってきたのだろう?”とわからないくらいの商品もあります。それだけ、北一硝子は検品に厳しいということを、間接的にお客さまにお伝えしています」と語る松島店長。その説明により、お客さまは「北一硝子って、こんなに品質管理がしっかりしているんだ」という印象を持ち、さらに「これはお買い得だ!」と付加価値を理解し納得の上でお買い求めいただけることになります。その丁寧な説明こそが、アウトレット店最大の「おもてなし」と言えるでしょう。
また、「最後の印象が大事なので、お帰りの際に一言加えて、ご挨拶をしています」という松島さん。じつは、「おたる案内人1級」の資格もお持ちだそうで、この資格ができた初回に受験し合格されたそう! 「小樽出身じゃないので、街をもっと好きになりたいと受験しました。資格を活かせたら…と思っていますが、なかなかその機会はありません…」と少し残念そうに語ってくれました。 最後に、「いつも、アウトレットを目指して来てくれるお客さまもいます。“あれ?前とは違うな”と、常に面白いと思ってくれるような店づくりをしていきたいですね」と語る松島さん。個性あふれる商品とお客さまの一期一会の出会いを、ベテランスタッフたちの丁寧な接客が支えているんですね!

北一硝子 製作体験工房
パートからスタートし、約35年のキャリアという平田店長。花園店時代も、製作体験を担当していました。グラスや醤油差しなどに砂を吹き付けて表面を削る「サンドブラスト体験」が人気ですが、工程の1つに、好きな絵柄や文字のシールを選び、貼り付けるという作業があります。そんなシートの貼り方を説明したりなど、他の店舗以上に会話が多いのが、体験工房の特徴のようです。

「絵柄などのシールを貼った後は、砂で削らないところを隠すためのマスキングテープを貼ります。このテープがしっかり貼れていないと、砂の当て方によっては剥がれてしまい、思ったような絵柄が出ないことがあるんです。だからこそ、しっかり何度も確認をします」という平田さん。お子さんの製作体験も多いため、お客さまが悲しまないように「しっかり確認する」ということが、体験工房のおもてなしの1つなんです。
「マスキングテープを剥がす時に、ジョッキを落としてしまった修学旅行生もいました。ショックを受けていたし、時間もあるようだったので、もう1個作ってもらいました」とニッコリ。まさに「世界に1つだけの作品」であり、想い出と共にずっと残るものだからこそ、この仕事に非常にやりがいを感じているそうです。
他のスタッフもコミュニケーションをとるのがうまい人が多いそうですが、忙しい時には笑顔がなくなっていることもあるそう。おもてなし認証を取得してからは、「そういえば、笑顔が少ないな」「声のトーンが落ちているな」と確認をするようになったそうです。さらに、研修を受けた後では、お客さまへの声掛けが増えたとも感じています。「小樽出身ですが、以前の小樽より、街全体のおもてなしが良くなっていると感じます。ほかの皆さんにも広まるといいですよね」と、市民としても感じているそうです。北一硝子の各店舗だけでも、様々なおもてなしの形がありました。こんな個性あふれるおもてなしが、小樽市内にさらに広がったら、観光客の皆さんはもちろん、私たち市民もどんなにか楽しく嬉しいことでしょう。おもてなしの輪を、もっともっと広げていきたいものです。
